LIFE LIKE BLUE

Diary Log-2004-02

2月29日

親から早く身の振り方を決めろとのこと。大変に申し訳ない。ホントごめんなさい。ナントカします。

親の顰蹙を買おうとも、今日は編集やりました。おまつり。さんとTIGERさんと、後輩のst、Sキネが来てくれました。日を改めて見てみると、細かいところで整合性のないカットがあったり、「なんでこんなんOK出したんだろ?」てなところが出てきて、それらをいかにそれらしく仕上げられるかが勝負どころとなります。実際映画を作る楽しみってのは5割が頭の中で想像してるときで、残りが編集してるときです。撮影してるときは思い通りのカットにならなかったり、演技に頭を悩ませたりでそれほど楽しくない。上映中は編集で何度も観てるのでそれほど楽しめない。

で、実際に編集ですが、当初6分程度だと思っていたのが結果的に11分強と、倍近い長さになりました。そのくせ急転直下の展開で(脚本2枚ならそんなもんか)ある種ジェットコースタームービー。オープニングタイトルとエンディング→エンドロールの流れは割と早くから構想があったので、かなり想像通りに完成できました。とても良い感じ。昔は割に凝ったタイトルバックや映像を作ろうと色々試したけど、最近はどちらかというとシンプル志向になってきました。簡単に見えても、細かいところにかなり力を入れてるんだけどね。

後輩のnexとstは遅くまで付き合ってくれました。ただ、nexは色々手伝ってくれたけど、stはひとりでコンビに行ってビールとウイスキー買って、ひとりで飲んで、ひとりで酔い潰れていました。

今日はとりあえず本編のつなぎと音量調整まで。編集中、映像をデスクトップで観たところ思ってたより画面が暗かったので、この先明度の調整と劇中の音響効果のエフェクトをやらなくては。そしたら完成。

あと、飛び上がるほど嬉しいことがありました。

2月28日

今日は映画の日。映画沢山観たから。

先週忘れたライターを回収に甲府へ。ついでというか何と言うか、今日封切りの、ピーター・ウィアー/『マスター・アンド・コマンダー』。封切り日なのに客の入りは3割から4割ってとこ。映画雑誌のレビューは結構辛めなこの作品ですが、普通に面白かったです。とにかく音響が秀逸。船倉内部の描写ではキールが軋む音や埃が落ちる音まで聴こえ、臨場感がすげぇ。戦闘シーンも地に足の着いた迫力があるし、そもそも砲撃の威力があんなにすさまじいとは。イメージとしては弧を描いて落ちてくるという感じだと思っていたのですが、まさにメジャーリーガーのストレートのごとく突っ込んできてすべてをぶっ壊す感じでした。なまじ音が良いのでかなり怖い。ラッセル・クロウが主演ですが、他の乗組員や船長の親友役のポール・ベタニーも良い演技。『ギャングスター・ナンバー・1』ではナイフみたいなギャングを演じてましたが、今回は落ち着いた船医役。ワンマン船長と彼を信頼して命令に従う乗組員たちの絆がメインの野郎臭い映画ですが、人間がしっかりと描かれていて、さすがはピーター・ウィアー。ただ、劇中結構ある手術シーンはかなりグロい。ろくに利かない麻酔で腕をちょん切ったり、みんなの前で頭蓋骨に穴を開けたり、果ては自分で腹を開いたり。直接的な描写というより、役者の痛がる演技や音がリアルで…。中盤がちょっとダレるのも気になりましたが、戦闘シーンと嵐のVFXを観るだけでも劇場に行く価値あり。

帰ってきてからTVでやってた、レニー・ハーリン/『クリフ・ハンガー』。これは高校の山岳部時代にみんなで真似したなあ。ロープで部室裏の壁によじ登ったり。今では立派なB級監督のレニー・ハーリンですが、バイキングの血を引いてるだけあって、崖から崖へジャンプしたりクレバスを落っこちたり、「人間このくれぇやれば出来るだろ」という無茶なアクションが多くて素敵。主演のスタローンが高所恐怖症で絶壁をよじ登るのを躊躇してたら、監督がするすると登って見せて、「イタリアの種馬にゃこんな真似はできめぇ」とけしかけて登らせたらしい。監督業も大変だ。

その後ビデオで、ブラッド・アンダーソン/『セッション9』。有名なダンバース精神病院の廃墟を舞台にしたサイコ・スリラーで、石綿の解体にやってきた業者のおっさんらが狂気に飲み込まれていく話。職種は違えど日雇い労働のバイトをしている身としては、やけにリアルな休憩時間の姿や作業中の会話に鬱。出演者はほんとにおっさんばかり。痛がるおっさん、悩むおっさん、ビビるおっさん、怒るおっさんがてんこ盛り。そのうちのひとりを演じているデビッド・カルーソは個人的にお気に入りのバイ・プレーヤー。『プルーフ・オブ・ライフ』の陽気な交渉員役も良かったけど、この作品の静かな演技も好きです。実際の本人も良い人そう。

BSでは、マーティン・スコセッシ/『グッド・フェローズ』。マフィアにあこがれて地元の顔役になった少年の実在の半生を描いた作品。主演のレイ・リオッタにロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシと実力派が揃っているだけあって演技は申し分ない。ただ、先日『テクノライズ』で大西さんの壮絶な最期を観た身としては、派手に金を使いまくったり女をはべらせたりする何かチャラチャラしたギャングどもばっかりなので素直に楽しめない部分も。デ・ニーロはいつものデ・ニーロでしたが、驚くべきはジョー・ペシ。いつも映画ではコメディリリーフですが、今回は笑えない。とりあえずささいなことでキレると殴る、銃をぶっ放す、撃ち殺すというサイコなギャングスター役。普段笑いをやってる人間にキレた役をやらせるのがいちばん怖い。

書いてる現在イーストウッドとバート・レイノルズの『シティ・ヒート』をやってますが、いかんせんもう眠くなってきたので最後まで観れなさそうです。しかし、クリカンによるイーストウッドの吹き替えはもうルパンの声にしか聞こえませんな。

明日は自分の映画の編集。

2月26日

今日は2・26事件の日でしたか。

今日もいい天気でした。トンネルの中ではさっぱり解りませんでしたが。今日で一応作業終了なんで、明日はゆっくり寝れそう。

トンネルの中で突っ立ってたら、不意にスタローンの『デイライト』を思い出しました。スタローンがトンネル内の事故の救出に向かう映画。何気に面白い映画だったなあ。確か母親と一緒に観に行った気がするんですが、爆発に「ヒィッ」と声をあげたり、犠牲者が出ると涙ぐんだり…。まさに観客の鑑のような反応でした。こういう風に人の感情を揺さぶるような映画を作ってみたいもんですな。ちなみにこの映画のサントラは、僕の中では歴代スコアの中でも3本の指に入る傑作です。映画のシーンはうろ覚えでも、ランディ・エルフマンのこのスコアを聴くと無意味に昂揚します。オーケストレーションの引きとタメが絶妙。90年代のハリウッドアクションの功績の一端は、ハンス・ジマーに代表されるような、ともすれば映像を食いかねない迫力とオーラを持ったスコアの力というのが多分にあるような気がします。

帰ってから、友人らと飯を食い、そのまま飲みへ。駅近くにある一見さんお断りの焼き鳥屋ですが、なるほど酒もトリもラーメンも美味かったです。まだ行ったことのない店がいくつかあるので、卒業までには行っておきたい。最近は飲むとしばしば友人やゼミやサークルに無闇に感謝の言葉が出てきてウザがられるのですが、まあそれももうすぐ最後って事で。

セブンイレブンで売ってる「ボスプレッソ」を買ってみたのですが、なかなか美味かった。量は少なくて高いけど、ちゃんとコーヒー店で出されるような深みとコクがあっていい感じ。月並みな感想だけど。

2月25日

マジで疲れてます。いやあ、あんな仕事を週休二日で続けられる作業員の人たちはスゲェわ。

最近はバイトと晩飯の話しかしてないような気がしますが、まあそれも良し。今日は後輩のtepと飯を食いに行きました。そしたらテーブル席にひとりで来ている男性が座っていたのですが、この人がやたらと格好良かったです。雰囲気は明治大正時代の作家という感じで、森鴎外と夏目漱石を足して2で割ってスーツを着せてパスタを食わせたような感じでした。運ばれてくるまで、背筋をぴっと伸ばして文庫本を丁寧に捲りながら読んでまして、パスタが来たらきたで優雅な手つきでタバスコを取る動作など、すべてが洗練されているような振舞。酒(ビンビールコップ2杯)が入っていたせいか、何か妙に感動してしまいました。帰るときに見たら普通の量販店で売ってるようなジャケットで残念。是非ともコートを着ていただきたかった。

あと、追伸。アレは友人としての最後の忠告のつもりだったけど、結局解ってもらえなかったようで残念だ。もう知らん。

2月24日

本日の作業はトンネル内清掃の警備。煤煙渦巻く笹子トンネル内をひたすら行ったり来たり。一日6時間もウォーキング出来て、さらにお金までもらえるんだからお得ですね。全く健康的じゃねえけど。

とにかく煤煙が酷い。入って10分もすると目が痛くなってきて、1時間もすると防塵マスクを着用していても胃液がこみ上げてきます。外に出ると指の先から髪の毛一本に至るまで真っ黒け。水で洗ってもなお拭いたタオルが黒くなります。あんなところで一週間も作業してたら余命がぐんぐん減っていきそう。それでも仕事後の一服は外せませんがね。

そういうわけで、トンネル内を歩き回って撮った写真をARTWORKSにまとめてアップしてみました。左上「Highwaystar T」は81.4Kmポスト付近。出口から500メートル位ってところ。壁が吹き抜けになっていて、一瞬だけ外の光が差し込む。その隣「U」はトンネル最深部。5km近くあるトンネルの中央部なので、太陽の光も差さず、オレンジの陰鬱なライトも煤煙に霞む。出口も入り口も見えず、何もかもが体に悪い。左下「V」は珍しい避難口。内壁の脇についてる奴。多分普通に生活してたら一生見ることのない場所のひとつ。ほんとにここだけ青い。外は風が強かったのか、ドアが唸り声を上げながらガタガタしていて怖かった。ダンジョンみたい。最後の「W」は82kmポストの示標。トンネル内部の構造物はフォントやデザインが何気に凝ってたりする。

帰ってきてからゼミの友人方と、山中湖にあるカレー屋へ2000円のカツカレーを食いに行きました。カツカレーに2000円もの値段をつける店は初めてでしたが、客は僕らしかいませんでした。肝心のカレーは、ルウはフルーツと野菜を煮込んだ感じの香りが強く、香料が駄目な人にはちょっときついかも。個人的には嫌いじゃねーけど。ヒレカツの肉がやたら柔らかくて美味かったですが、同じ値段のポークカツカレーはそうでもなかったようです。辛度が7段階あって、3はまあごく普通のカレーでしたが、Mツマ氏はいきなり辛度6に大盛という選択を。こちらは香辛料の香りが強くてぴりぴりくる感じでしたが、マスターが脅していたほどではありませんでした。マスターは最後まで「辛くなかったですか?」と残念そうでした。まあまあ美味かったけど、2000円出してカレーを食うのは一生のうち最初で最後でしょう。

2月23日

今週はバイト強化週間。稼ぐぞーてなもんですが、早速疲れ果てました。指示が人によって違うのは勘弁。

明日は6時出勤なんで寝かせてください。

風呂入ったら目が覚めました。ので、先日の戦利品。

Jazzanova/『Soon Part One』。ディープジャズからラテン、ボサノヴァ、アップテンポのサンバまで幅広い音作りをするベルリンの6人組DJ&プロデュースグループのファースト『In between』からのシングルカット。楽器の軽妙なテンポと微妙に鬱入ってるヴォーカルが変な感じ。オリジナルとリミキシング2曲だけど、オリジナルが一番ごちゃごちゃしてる感じ。高音が綺麗なので確かにレコード向け。

V.A/『SUMMER E.P.』.。安かったのでジャケ買い。こちらはやっぱりユルい感じのR&B。曲名からもっと暗いのを想像していたけど、案外普通。嫌いではないけど、ストレートすぎてちょっと物足りないかも。リミックスはいい感じ。しかし、あのレコード屋はHIPHOPとR&Bの比率高すぎ。

2月22日

知り合いの演劇を観に行きました。高校と大学が共同で行うという珍しい形での上演。脚本は既成のものなのでそれなりに楽しめましたが、残念ながら出演者の完成度はイマイチ。せめて台詞をかむのはもう少し何とかならなかったものか。それでも大学側の役者は堂に入っていたし、高校側の役者も将来を感じさせるものです。地域との交流という面では中々面白いけれど、もう少しそれによる新しさや力を感じたかったかな。

読了→黒崎視音/『警視庁心理捜査官(上)(下)』徳間文庫刊。異常心理専門の女性捜査官の孤軍奮闘を描く刑事小説。ロバート・K・レスラーなどのベストセラーに通じるプロファイリングものだが、それが日本の犯罪捜査でどのような位置合いなのか、日本における心理捜査とはいかなるものなのかを丁寧に描いた作品。しかしながら、中心となっているのはプロファイリングのプロセスではなく、むしろ足で稼ぐをモットーとする男性社会の中で女性捜査官が直面する壁と葛藤。そのせいか、主人公の理解者を除く一般捜査官や犯人の人物描写が浅いということを感じますが、孤立していくなかで断片的な情報をつなぎ合わせて犯行状況に肉薄していく様は中々の迫力。個人的にはもう少し、犯人側の複雑な心理やサイコ・スリラー的な要素、登場人物のキャラクター造詣に複雑さが欲しかったかも。公式ファンサイト→胡蝶亭

吉川良太郎/『ギャングスター・ウォーカーズ』カッパ・ノベルズ刊。処女作『ペロー・ザ・キャット全仕事』から続く近未来ノワールのシリーズ。本作は米中戦争後、疲弊した両国に代わり英仏による分割統治を受ける上海を舞台にしたパルプ・ノワール。国政の衰退に伴い台頭した英仏中マフィアが分割統治する上海に、パイプ・ステッキ・フロックコートという19世紀のマフィアを髣髴とされる神出鬼没の怪人が現れたことから巻き起こる抗争を中心とした作品だが、肝心の怪人があまりやる気を見せないので今ひとつ盛り上がりに欠ける。というか、数多いキャラクターや主人公を含めた特異能力者たちの出自、かつて孫文が推進した都市奪還計画『大上海計画』など、色々なファクターで引っ張っておきながら最後にすべて放り出したまま終わってしまったので、ちょっと不完全燃焼。ラストの収め方も「空から蛙が降ってきた」的な不可思議事象による無理矢理な終了なので、その後の状況がよく分からないまま終わったのも残念。出来ればもう少し謎に肉薄した続編の登場を願いたいところ。

最近893さん方の抗争が激しいようで。「鉄砲玉に何言っても仕方ねぇよな」とは辻中親分の言。しかし、太ももを撃たれて死亡ってのは…。

最近暖かいと思ってたら、もう台風みたいな風雨が。傘が一本駄目になりました。突風が吹いたらアパートがぐらぐら揺れたりしてかなり怖い。

2月21日

卒論資料を県立図書館に返すために、甲府へ行ってまいりました。シネマの友人と一緒です。彼と一緒に買い物に行くのも4年間ではじめて。

『ジョゼと虎と魚たち』を観るつもりだったのですが、朝調べたら昨日で終わってました。丁度作品の切り替え時期なので、観たい作品がなく、今回は買い物だけ。借りてた資料はもう返却期限を一ヶ月も過ぎてたんで、返すときとても怖かったー。何も言われなかったけど。「かなり恐縮してるように見えたからいいんじゃないけ?」とは友人の弁。

甲府の町は実に面白いです。「石を投げればB-Boyに当たる」ほど皆ラッパーの格好をしている。というか若い人は大体がラッパー系かギャル系の格好をしています。だれもラップなんかしてないけど。「オリオン通り」という、何がオリオンだかよく分からない繁華街の短いアーケードに軒を連ねる洋服店はみんなラッパー系だし、そういった連中の中心には必ず黒人がいるという異国情緒溢れる町です。と思ってたら500メートルほどで突然誰もいなくなり、のんびり突っ立ている老人と猫しかいないシャッター街になったり。メンズヤングの服屋に行ったら、同じフロアの隅にひっそりとヲタ向けのゲームショップがあったり。変な町。

結局映画は観れませんでしたが、小さいレコード屋を見つけたり、それなりに楽しめました。品揃えの8割がHIPHOPだったのは驚きだったけど。これでもう甲府に来ることもないと思ってたら、最後の最後で入ったレストランにライター忘れてもう一度行く羽目に。

2月20日

劇映画としては『綺麗』に続き、1年ぶりの新作となる監督第4作目『ジュオーヌ』。今日クランクインしました。で、先ほどクランクアップしました。

『ジュオーヌ』は後輩のtepが書いた短編ホラーで、出演者はtepに同じくサークルの後輩のktst、そして1年生の女の子。『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』を観ていたらtepから電話があり、僕に監督せよと。短い脚本なので短期間で撮れるし、話の筋も込み入っていないので色々試せるということで、一も二もなく承諾しました。総撮影時間は約6時間で、台詞も8割近くがアドリブという状況でしたが、本当に楽しかった!出演者も長い待ち時間や、監督の演技への注文に耐えてよく頑張ってくれました。

久しぶりの撮影でしたが、本作は最近観たジョー・カーナハンの『ナーク』やソダーバーグの『トラフィック』の影響で、カメラはすべて手持ちというドキュメンタリーよりの映像。色調もダークブルーで統一。これが単に目障りなノイズになるか効果になるかは編集を終えてみないと分かりませんが、クレーンを使って俯瞰から一気に降下するカットなど、色々と遊べたので撮ってて楽しかったです。そして何より驚いたのは、4作目にしてようやくタイトルが漢字じゃなくなったってこと。

まあ、この前追い出されたし、後輩の1年や2年と一緒に撮影する機会ももうないだろうと思っていたので、こういう形でみんなと撮れて良かったです。4年間、何だかんだで長いフィルモグラフィーが出来るほどたくさんの作品を撮ることが出来たし、それは面白い映画だったし、それをいろんな人に観て楽しんでもらえたので本当に満足です。この4年間とそれで得たものに自分なりに誇りを持ってるし、それに対して負け犬がどうとか言われる筋合いもないっての。他人を無神経に傷付け、結局ろくなものも作れず、自分に作ったものに対して持つ言葉もないで終わった4年間に比べればはるかにマシです。それでも負け犬だと言うのならどうぞ罵ってくれ。僕はこの人生でいい。

2月19日

今月の「Invitation」誌に黒沢清監督の新作ショートフィルム『ココロ、オドル』が付いてきました。今ひとつだった『回路』以降の作品をまだ見てないのですが、傾向としては映画美学校の企画で作られた『大いなる幻影』に近い感じ。70人近いエキストラと浅野忠信の出演で、人々の対立と融和を表現した作品。風の音による不規則な低音のノイズと、エキストラが足を踏み鳴らしたり楽器でたてるミニマルで規則的なノイズ、隊列を組んで歩き回るあたりも『大いなる幻影』を彷彿とさせます。

この監督は何を撮っても黒沢清だと分かる辺りがすごいのですが、この作品もショートフィルムながら、やっぱり黒沢清。うじゃうじゃと動きまわるエキストラと、ひたすら外からそれを傍観している浅野忠信。彼の作品はいかに本人がホラーではないと強調しても、やっぱりどこか不気味。それは彼のフィルムの中に切り取られた人間がみな、無感動で無気力で空洞のようにぽっかりと穴が開いたようにうつろだから。ただ、『CURE』や『カリスマ』の頃に比べて、それが作為的になりつつある気がするのは、ただの気のせいではないような気が…。

黒沢清監督の作品でもうひとつ気に入っているのが、廃墟の描写。彼の映画には必ず舞台として廃墟が登場するのですが、無機質な人々と対照的に廃墟は今にも何かを語りだしそうな、そういう雰囲気を持っています。『回路』なんかは結構無理矢理な感があったのですが、それでもあのシーンは中々面白かった。本作でも廃棄された倉庫が出てきますが、光の加減なんかが絶妙です。ラストで融和した人々がある境界を越えて突然ぶっ倒れていくのですが、その瞬間その部分だけ太陽が出てきて照らし出す。狙ってやったのかと思っていたら、全くの偶然で、本当にその時その部分だけ太陽が出たのだそうな。そういう予想していなかった偶然性があるからこそ映画は面白い。

それを見たせいかどうか分かりませんが、その夜は人を二人殺す夢を見ました。特に恨みがあるわけでもない二人で、友達でもないし学生でもない。しかも殺した理由が、撮影用のカメラを守るためという…。凶器はカッターと鋏。夢の中で、人を殺してももっと冷静でいられるかと思っていたけれど、全然そんなことはなく妙な不快感と焦燥感を感じていました。映画にしたら面白いかもしれない。

2月18日

バイト。ただ立ってるだけなのに、何故こんなに疲れるんですかね?今日は珍しく、高速道路の上ではなくて裏でした。文字通り、道路の裏側。コンクリの剥離や老朽度のチェックをするために、ひたすら道路の裏や柱を金槌で叩いて回るという作業の警備です。しかしすごいのは本当にクレーンを使って満遍なくそこらじゅうを叩いて回っていること。道路の長さを考えると気が遠くなる作業です。皆さんが普段使っている高速道路の安全は、このような地道な作業によって保たれているんですね。いや、まあ僕がやってるわけじゃないですが。

高速道路の下というのは、なかなか面白い空間です。柱が延々と続く巨大構造体。一日中立っていると光が差し込んで色が段々変わっていく感じとか、見ていて飽きないモノでした。

ARTWORKSの写真はそれに色を加工したものですが、いつも色の調整なんかはさりげに難しいです。加工時に上手く出来ても、保存すると色が変わってしまったりするので、常に保存時の状態と見比べながらの作業。カラーバランスの割合が1違っても全然違う仕上がりになります。まあその中で、いかにイメージに近いものを作るかというのが楽しいんですがね。

あえてサイト上での表現について苦言を吐かせてもらえるなら、公的な場で何かを表現して、それについて感想を貰いたいのならば、それに対する非難や否定を言われるということも覚悟しなくてはならないと考えます。それはその作品に対する評価のひとつであり、見た人も期待しているからこその発言だし。誉めてもらいたいだけなら感想を求めたりしてはいかんと。なにかを場で公表するときのリスクのひとつです。それを言われたなら、そいつをギャフンと言わせるようなものを作ってやればいい。それが出来ないのならば、何かを作ることなどできない。

書こうかどうか迷ったけど、まあそういう考え方もあると。

メガストラクチャー

2月16日

昨日は映画サークルの卒コンでした。運動部のように堅苦しい儀式や一気もなく、文化部のように色紙とかみんなに一言もない、実に快適なコンパでした。色紙とかはともかく、卒業生から一言すらないってのは冷たいように思われるかもしれませんが、ホントそんなの必要ないです。言いたいことは日ごろから言ってるし、色紙なんかよりも直接「寂しくなります」って言ってくれるので。御仕着せがましくなく、ヌルすぎず、そんなうちのサークルの空気がほんとありがたいです。卒論であんまり話せなかった同輩とも、あまり繋がりのなかった1年生とも喋れたし、これ以上ないくらい楽しいコンパでした。遅くなったけど、みんなありがとう!多分明日も会うわけですが。

2月14日

卒論が終わってもっと腑抜けた生活になるかと思っていたのですが、全然そんなことはなく、むしろ何だかんだでずっと寝不足。

状況が急展開過ぎてもうついていけません。一体アレはなんだったのか?ともすればあの一晩に見たモノがすべて夢だったのではないかという軽い眩暈と混乱に襲われます。僕の人生には全く関係のないことなのに。誰かがすべての真実を語って僕を安心させてくれるということもなく、雲をつかむような情報と状況があるばかり。まあいいんだけど。

今日は以前行った展示の後始末でひたすら町を歩き回ってました。お会いした人たちにとっては、これからも続けていくべき重要な案件で、彼らの期待ともうすぐいなくなる自分のすべて終わったという感慨のギャップに申し訳ないという気分がただひたすらに。

14日という風習にも、もうずいぶんと縁がなかったわけですが、それがどうこうという前に良い後輩がいてよかったということと、自分がこれまでやってきたことがそれなりに後の人たちにとって意味があって良かったということ。

あとNHKさま、不合格は別にいいんですが、履歴書を実家に送り戻すというのはマジでやめていただきたい。なぜ結果を母親から聞かされなけりゃいかんのかと。親不孝にもほどがある。

2月12日

卒論の口頭諮問でした。「○○はいきいきした良い目をしてる」って褒められることももちろん無く、むしろ昨日の飲み会ではゼミの友達に「なんか目が死んでるよ。大丈夫?」って言われました。大丈夫!生きてるよ!

で、肝心の諮問のほうですが、終始和やかなムードで、僕一人がひたすら弁解に弁解を重ねるという15分間。とりあえず教授から「ここにいる人間はA評価」ということを先ほどの飲み会のときに言われたので、問題が無ければ卒業できるでしょう。もうすぐ教授の「「マリみて」はええアニメやでー」というようなお話も聴けなくなってしまうのがちょっと寂しいですな。

さて、今になって白状しますと、卒論執筆中は短期間でかつて無い数の映画を観ました。2週間で20本近く観ました。というか、映画を観てるか卒論を書いてるか、というような日々でした。卒論を書きながらへこんで、映画を観て回復するような日々でした。そうやって釣り合いをとらないと試練に立ち向かえない人間です。友達に借りた「インディ・ジョーンズ」のDVDセットで久しぶりに『レイダース 失われたアーク』を観ました。これは僕が映画好きになるきっかけとなった記念碑的な映画です。今観てもほんとに面白い。一緒についているメイキングで、本当に楽しそうに映画を撮っているスタッフの姿を見ると、また映画を撮りたくなってきます。それにしても、スピルバーグはほんとに気持ち悪いものが好きだな。あの数の虫にはとてもじゃないけど耐えられる自信がない。

不思議なもので、執筆が終わった今でも突発的に焦燥感に駆られることがあります。トラウマかな。すべて終わった今、もっと開放感に満ち溢れているかと思っていたけれど、むしろ気分はひたすらダウナーに落ちていく一方。何故だ?

2月11日

卒論発表会でした。教授に「君はなんて読解力があるんだ!君のような学生は中々いないよ!」とか言われることもなく、「まあこんなもんやろ」という苦笑いを頂いたのでまあ良しとしましょう。

その後、ゼミの卒コン。追い出す方は僅か4人でしたが。追い出され甲斐ねぇー。1次会の料金がたらふく食って僅か1000円だったのは驚きでしたが。

明日は本番の口頭諮問があります。社会哲学の教授なので何を聞かれるかさっぱり想像がつきません。無事に終わればいいなあ。

2月9日

イラクに自衛隊が到着したりしてるのに、僕は一体何してんだコノヤロウ!何であと少しの論文が進まないのかと!?まずいんでないかい?

今日は提出期限なんですが、よくもまあどうして、こういつもいつもギリギリになってしまうのかと。この与えられた猶予期間何してたのかと。いい加減自分自身で嫌気が差しますわな。

今日の夜に笑って日記が書けるいいなあ。

はい。論文終わりました。昼に出し終わって晴れて自由の身です。別にスゲー大作書いたとかでは全然ないんで、後に残ったのはコーヒーと煙草でやられた喉とコンビニ袋と資料が散乱する部屋と途方もない疲労感だけです。遊ぼうにも就職活動せにゃならんし。まあこれで大学の授業がすべて終わったわけですが、他の皆さんのような感慨も何もあるわけでもなく、あるのは「かんがい」と打つと「灌漑」に変換されるようになったキーボードと明後日の卒論発表で何を喋ろうかという心配だけ。ああ、今眠いからかも。映画撮りたい。

2月7日

痛てててて。頭痛てぇ。飲むペースが速すぎた。

まあ詳しいことはいずれ出てくると思いますが、今日は楽しかったです。特に、夜のコンビニのベンチでみんなでラーメンを食べるというシチュエーションは本当にいいもんですね。こういうのって学生でもないと出来ないことだし。

それにしても、映画が好きで本当に良かった。映画を観て素直に楽しめる自分で本当に良かった。映画がこの世に存在してて本当に良かった。みんなありがとう!

2月6日

BSで放送していた『トラフィック』を録画し損ねました。観始めたらもうすでに30分くらい経ってしまっていて、またもやオープニングを見逃してしまった。またもやというのは、初めて劇場で観たときも、上映時間に遅刻して観損ねてしまったから。映画の魅力は最初の5分と最後の5分にある、という持論を持つ僕にとっては非常に恥ずかしいことなのです。スチルでのみ知っている、あのメキシコのセピア色の大地を走る麻薬捜査官の車列を今度こそ見ようと思っていたのに。

それにしても、監督のスティーブン・ソダーバーグはとても面白い撮影の仕方をする。カメラはあくまで手持ちで、しかも自らカメラを持って先頭で撮影する。なんか自主制作みたいで好感が持てます。邦画ではカメラがふらふらしてるなんて言語道断ですが、『イギリスから来た男』のメイキングでは、わざわざカメラマンの脇で必死にカメラをゆすっているソダーバーグの姿が映っていてちょっと笑えました。『トラフィック』も、やろうと思えばもっとアクション満載の活劇に仕上げられるのに、あくまでドキュメンタリータッチの静かに抑えた演出で、ソダーバーグの撮影法が活きているのがすごい。DVでこれをやろうとすると、単に下手なカメラワークにしか見えませんが。

なんか音楽いいなあと思いながら最後まで観てたら、ふいに聴きなれたフレーズが。先日購入したJAKATTAのアルバムに収められている曲が使われていて、自分の趣味がこういうところで突然出てくると、つくづく趣向に変化がないことを思い知らされます。エンディングはブライアン・イーノ。サントラ発売されないかな。

発売されたばかりの「rilax」誌を読んでたら、不意に見慣れた富士山のマークが。東京へ行くたびに乗っている富士急行線の「フジサン特急」にペイントされているキャラクターがズラズラと特集されてました。よくもまあこんな奇怪なモノを全国誌に…。「富士をうろつく怪しげな集団」とか形容されてるし。朝一でこの顔を見せられると極めて鬱になるというのに。よくこんな奇怪なキャラクターを大量に作り出したものですな。数えてみたら104匹もいるらしい。これよりさらに奇怪なのが、通常車輌にペイントされている「機関車トー○ス」。これから長い旅になるというのに、あの卑猥な笑顔に出迎えられた日には、そのまま家に帰ってもう一度寝なおそうかという気分にさせられます。

2月5日

久しぶりに、某美大に行っている昔の友人がこちらに来たので、彼と初教学科の友人と(何故か)シネファクの後輩stと飯を食いに行きました。そこで聞いた、美大における映画制作の驚愕の実態ときたら!

彼の同級生とのやり取りを彼経由で聞いたので、本当にそうなのかは知りませんが、まず第一に劇映画を作るのはあまりよろしくない。らしい。実験性のある映画を作らなくてはいけない。何故なら質の高い観客に見せなくてはいけないから。DVなどのデジタル機材を使って撮影してはいけない。何故なら黒沢明などの名監督はそんなものを使ってなかったから。さらに、編集でデジタルエフェクトを使ってはいけない。何故ならそれは甘えだから。

スゲェ!ていうか、それはもはや映画なの!?うちのサークルの作品なんか見せたら、全員クビを撥ねられてしまうかもしれませんな。質の高い観客?そいつをここへ連れて来い!

まあ、そんな連中とは多分100%話が合わないので、まかり間違っても友人にはなれそうもないですが、逆に言えば、この大学の4年間で一緒に映画を作ってきた連中が、いかにいい連中だったかってことです。ちょうど飯を食いながらその話をしてたときに、サークルの1年生の子らが来たんですが、そいつらが「映画撮らないんですかー」と言ってくれた日には、ありがたくて涙が出るってもんです。卒業までにはせめてもう一本くらい撮りたいところ。

その前に論文終わらせろと。周りの友人方の日記を見るとみんなひと段落ついて遊んでいる!羨ましい!

2月3日

24時間で15000字。そろそろ吐きそうです。煙草吸いすぎ。いつもこうなると分ってるのに、何でもっと早くに始めないんでしょうかね僕は?この意志の弱さは、いい加減何とかしないと。今日中に終わらせるつもりだったのに。

JAKATTA/『VISIONS』。ハウス界で活躍するジョーイ・ネグロの新プロジェクト。「シャーシャンクの空に」と「アメリカン・ビューティ」のサウンドトラックに、SEALの「My Vision」とAIRの楽曲をミックスしてダンス・ミュージックに仕上げるという、もはや何がなんだか分らないアルバム。闇鍋のようにジャンルをクロスオーヴァーさせているのに、なぜか破綻がなく、まるで始めから決められていたように綺麗にまとまっている。SEALもAIRもエレクトニカを取り入れた楽曲作りをしてるし、両者ともサントラの常連だから間違ってないといえばそうなのだが、普通そんなこと考えないし。SEALのアップテンポな楽曲に、不意に思い出したように「アメリカン・ビューティ」の静かなピアノが入るとすさまじい破壊力。ギリギリのところですべての要素が釣り合いを保っている、天才的な1枚。日本版はリミキシーズを収めたボーナスCD付でも2800円。J-POPのアルバムを買う気が起きないわけだ。

CD買いすぎかな。