LIFE LIKE BLUE

Diary Log-2005-10

10月2日

風邪はおおむね治りました。まだ鼻がぐずつくけど。なんか、季節の変わり目っていつもこうなんですよね。こないだ母親と電話で話してたら、母親も季節の変わり目で気温が18度を超えたり下がったりすると体調が悪くなるそうで。18度がボーダー?風邪じゃないの?遺伝なのコレ?

ええ、というわけで昨日から10月ですね。早いですね。9月はひたすら飲んでいた記憶しかありません。ああ、これではまるで駄目人間ではないですか。そろそろ頑張らないとな。

最近観た映画。

オーソン・ウェルズ/『黒い罠』
公開は1958年ですが、今観ても冒頭の長回しはすげえ。まあ、今だったらCGでいくらでも作れるんですが、奥行きのある立体的な構図とエキストラの配置、隙のないカメラワークはなんかもうドキドキしますね。香港のジョニー・トー辺りがこういうフレーミングを取り入れてまして、『ザ・ミッション』なんかのショッピングモールでの銃撃戦にその影響が見て取れます。
ストーリーは、メキシコ国境の街で起きた爆殺事件を偶然目撃したメキシコ人捜査官ヴァルガスとアメリカ側の捜査官クインランが事件の捜査に乗り出すが、ヴァルガスはクインランの強引な捜査に捏造をかぎつけ、彼の担当した事件を極秘に調べ始める、というもの。最近はマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』にご出演なさってたチャールストン・ヘストンが主人公ですが、アメリカ側捜査官役のオーソン・ウェルズがおいしいところを持っていき過ぎです。汚れ役ですが、最後の見せ場はウェルズの独壇場。最後の台詞が泣かせる。

スタンリー・キューブリック/『シャイニング』
ジャック・ニコルソンのあまりのキレっぷりに風邪が悪化。体調が悪いときに観るもんじゃないっすね。作品的には、怖さよりもキューブリックの映像的な技術力の高さに舌を巻きます。この映画で初めてステディ・カムが導入されたわけですが、いまだに『シャイニング』の三輪車のシーンほど巧く使った映画は少ないような気がします。スティーブン・キングはこの出来が気に入らなくて自分でリメイクしたりしてますが、いったい何が不満だったのか不思議ですわ。特典のメイキングには、気合を入れるために本番前に斧を振り回して唸るジャック・ニコルソンの様子が納められてますが、スタッフにぶつけそうになったりしてて、これだけでも十分に怖い。

アンドリュー・ラウ、アラン・マック/『頭文字D』
当然ながら全編広東語ですが、普通にみんな「群馬で最速のチームだ!」とか言ってます。それほど気にならんかったけど、なんか不思議な世界ですね。でも、それを含めて、最初に字幕でベースが日本の漫画であることが明言されてたりしてて好印象。どっかのカンヌグランプリ映画では、おくびにも出されてなかったしな!
監督が『インファナル・アフェア』のタッグだけあって、キャストもあの映画の面子が再び勢ぞろい。若手も巧いんですが、やはりアンソニー・ウォンのダメ親父っぷりが最高でした。酒飲みという設定で常に一升瓶抱えてるんですが、やけに顔色が生々しいと思ったら本当に飲んでたらしい。それ、演技じゃねぇじゃん!唯一の日本人俳優が鈴木杏でビッチ役だったり、チャップマン・トウはゲロ吐きすぎと色々突っ込みどころはあるんですが、それを抜きにしても、俳優はかなり原作に近い雰囲気を出してるような気がします。
レースシーンはさすがというか、CG一切なしを謳った高橋レーシングのリアルドリフトは迫力があって見ごたえがありました。日本で撮影して日本のレーシングチームを使ってやってても、やはりカメラワークのセンスは向こうの映画のほうが上手ですな。ドラマパートのシーンの転換のカット割りはなんかチャカチャカしてて観辛かったけど。

クラーク・ジョンソン/『S.W.A.T.』
DVDが安かったんで買い。全編にわたってひっきりなしにヒップホップやらローリング・ストーンズが流れ、とりあえずヘリも車も爆破しとけってな具合でして、もうね、もうこれでもかってくらいに大好きだ!内容は特殊部隊版トップガンというもので、もういちいち説明する必要もないあたりも大好きだ!コメンタリーにはサミュエル・L・ジャクソンをはじめとするキャストのものも収録されていますが、とりあえずみんなで「ヒャッホウ!」と叫んだり手を叩いて笑ったりしてます。とても正しい観方ですね。や、マジで。こういう映画がなきゃやってらんないっすよ。

ロバート・ロドリゲス、フランク・ミュラー/『シン・シティ』
予告見てたらテンション上がって、そのまま公開日に行ってまいりました。ああもう、いくら1日で映画サービスデーだからって、初日なんかに行くもんではないですね。人多すぎで参った。
映画はまんまアメコミの世界。モノクロのなかでエピソードのキーになるカラーだけハイライトになっているのも原作どおりらしいです。ロドリゲスは「これまでのアメコミの映画化の中で、最も原作に忠実な映画を作る」と明言しており、そのために全米監督協会を脱退してまで原作のフランク・ミュラーを共同監督に引き入れたほど。撮影方法はスター・ウォーズのそれと同じで、ブルーバックの前で演技をする役者に、後から背景を合成するもの。いやあ、ロドリゲスなんて、『エル・マリアッチ』の頃は、こりゃまたなんともバタ臭い監督でいいねえ、と思っていたけど、気づいたら3D映画とかデジタライズとかの最精鋭に名を連ねてしまうとは…。ゲスト監督に報酬1ドルでタランティーノを引き入れたのも、フィルムに拘って露骨にデジタルを嫌悪する彼の偏見を解消するためだというし。
ストーリーは3部構成で、それぞれミッキー・ローク、クライヴ・オーウェン、ブルース・ウィリスがシン・シティを舞台に愛する女を守るために戦うというもの。孤高の正義ハーディガン役のブルース・ウィリスはもちろんよかったんですが、まさかミッキー・ロークがここまで完全に復活するとは!煙草を吸う様や、銃をぶっ放して「アーメン」と呟く姿がいちいち渋くてアドレナリン出まくり。頭で考えるのではなく、侠心で観る映画ですね。対するヒールがイライジャ・ウッドでは、ジャイアンに虐められるのび太にしか見えないのではないかと心配しておりましたが、これはこれでキモい動きをする人食い野郎でなかなか見ごたえがありました。死体になってもベラベラ喋って周りに迷惑をかけるデル・トロをはじめとして、他のキャラクターたちもこれでもかというほどぶっ飛んでまして大変よろしい感じ。
ポップな映像とは裏腹に、ストーリーはチャンドラーを髣髴とさせる無骨なハードボイルドだったわけですが、全編デジタルという要素が示すのは、いまどきハードボイルドなんて『ロード・オブ・ザ・リング』並みにファンタジーでしかねえよってことなんでしょうか?