LIFE LIKE BLUE

Diary Log-2005-12

12月14日

今日も編集、明日も編集、明後日もその次もその次もその次も編集。助けて!ドラえもん!撮済みのテープを自動的にパソコンにキャプチャしてシーンごとに並べ替えて、あと失敗したカットをリテイクしてあの台本を持っているのに台詞がしゃべれないおっさんを抹殺してもう一度あのシーンを撮影できる道具を出して!どんな道具やっちゅうねん!

そんな感じでいい塩梅に脳みその箍が緩みかけている僕ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。僕はもうだめです。編集という作業は、どうしてこうも後悔の連続なのでしょうか?このカットの頭をもう少し長く撮っておけば、この台詞をこのアングルで撮っておけば、あの時この役者を使うと決めなければ…。現場で感じた些細な違和感を放置しておくと、必ず後になって後悔するとわかっていたはずなのに、でも絶対現場ではそういうことが疎かになってしまうものです。だから編集という作業は、いかにそれを誤魔化すかにかかっているんですがね、ちょっと疲れた。でも明日も朝から編集です。うぅ。

11月29日 撮影一日目 続き
さて、前回現場の蛍光灯を片っ端から外すという暴挙に出た撮影クルーですが、そのおかげで映像はかなりスタイリッシュな感じになりまして、僕のテンションもかなり上り調子。準備が整い、いよいよクランクイン。しかし!しょっぱなから撮影許可範囲を逸脱!担当者の方の、「多少ならはみ出しても構いませんから」というお言葉を拡大に拡大して解釈しまして、もはや全然関係ない場所で撮影スタート!大丈夫か!?
今回は気がついてみたら出演者が全員男という状況のなか、俳優陣の中でも若手の2人からスタート。このお二方は昨年先輩の作品でも競演しているということもあり、ざっと状況とキャラクターを説明しただけで、とても息の合った(?)演技をしてくれました。そしてなにより、今回の撮影では移動車を導入!いやあ、これは本当に素晴らしいですね!長年の夢であった滑らかなドリー映像に僕一人が大興奮ですよ!あれ?みんなあんまテンション上がってねえ!?いきなり置いてきぼりですか!?おかしいな!?
…まあ、そんな具合にサクサクとシーンを消化していったのですが、やはり照明にかける時間が予想を超えていきまして、次第に撮影も押していく…。昼前の段階で約1時間半の押し。僕はまあ何とかなんじゃね?くらいに考えていたんですが、周囲のスタッフのピリピリした視線が痛い。助監督はリアルタイムで撮順を変更していき、撮りこぼしても役者の出演が少なくて済む短いシーンがどんどん後回しに。
13時、移動車を囲んで今後の撮影プランについて話しながら地下駐車場で昼飯。ああ、もう何年も地下で撮影しているような気分だ、太陽が見たい…とみんな思っていたことでしょうが、地下とか廃墟とかが好きな監督ただ一人はそれほど苦にならず。そのギャップがまたスタッフの痛々しい視線となって帰ってきます。今回の撮影場所は、地下2階とはいえ、それなりに圧迫感が少ないロケーションだったのですが、やはりじわじわと人間の精神を蝕んでいくようです。それがまさしく今回のテーマなのですが、フレームの外では御免こうむりたいところです。
20分ほど飯の時間をはさんで、再び撮影再開。シーンが前後し、役者も入れ替わり立ち代り。正直なところ、僕としてもそろそろ何がなんだかわからなくなってきます。僕は割と映像至上主義を自認しているため、カメラポジションの設定と照明の設定に時間をとられ、役者の演技に注文をつける時間が次第に減っていきます。かろうじて頭の隅に残っているイメージを引っ張り出し、今目の前で起きていることと照らし合わせ、最低限の見切りラインを見つける。今回の映画の主要な役者はほぼ第一印象で決め、割と地に近いキャラクターを選んでいたのが功を奏し、それなりにイメージとかけ離れない演技でいくことができたのですが、それでも何かが微妙に違う、でも直している時間は限りなく少ない…。もっと、もっと時間を!そしてそんな中、この日の撮影の山場であるバイオレンスシーンの撮影に。

続く。

12月10日

前回更新から2週間余りが経ち、気がつけばもう12月ですよどうしよう。僕は今年一年を有意義に過ごせただろうか。いったい何日何時間何分何秒を無駄に浪費したのだろうか。もちろんそんなことを考えてる余裕なんざないぜ!あのシーンはまともに繋がるかどうか、それ以前に明日を生き延びられるかどうか、そんなことで頭がいっぱい、僕です。所詮暦なんて人間が過ごしやすくするために勝手に作った区分、今日飯を食ったら明日は食えるか食えないか、そんな人間にはクリスマスも大晦日も新年も関係ないぜ!今日は今日、明日は明日だ!早く素材をキャプチャしなきゃ!

というわけで、僕の映画の撮影は無事怪我人もなく終わり、現在はもうひと班の撮影に参加しております。撮影期間中は映画製作日記っぽくしようと思ってたら、とてもそんな余裕なんかなかったです。夜布団に入り、明日どういう風に撮ろうか考えて眠れなくなり、朝起きたら映画なんか撮りたくなくなってオエってなる毎日でした。まあそれでも現場に行けば、それはそれで楽しいのですがね。しかし、まだこの日記を観てくれている人がいる…かどうかは知らんですが、まあせっかくなので、というか『リベリオン』のオーディオコメンタリー聴いててテンションが少しあがったので、思い出せる範囲で撮影の模様を書いていこうかな、と思っています。ちなみに、今日は渋谷でジョニー・トーの『ブレイキング・ニュース』(二回目)を観た後、有楽町線の新富町から撮影に使うプロジブ(簡易のクレーンみたいな奴)のウエイト20キロを運んで両手の感覚がちょっとアレな感じです。乗換えがクソ不便な有楽町線は無くなればいいと思います。

11月29日 撮影一日目
府中の森芸術劇場の地下駐車場で撮影。朝5時半にカメラマンがレンタルしたハイエースに乗って学校へ。助監督と合流して機材、小道具、製作備品等をピックアップし、途中でドンキに寄ったりしながら一路府中へ。午前8時、府中芸術の森劇場に到着。ここはロケハンした中でも面積が格段に広く、雰囲気も素晴らしく、なにより良かったのは他に比べて金額がとてもリーズナブル。しかし、金額的にも日数的にもシビアなため、この日一日で地下駐車場内のシーンはすべて撮り終えなくてはなりません。その数実に16シーン!さすがにちょっと心配でしたが、周りには「自主の処女作のときは、もっとタイトなスケジュールでもっと撮ったから心配ない」と言っておく。あの時はカット数がキツかったことは本当なのですが、シーン数に関してはぶっちゃけ嘘です。すいません。でもこう言っておかないとスタッフがナーバスになるからね。これも監督の仕事です。製作担当ではなく、何故か助監督が今日の撮影の手続きをする間に、フラフラしながら煙草を吸う。こういう時間がある現場はとてもいいです。それに、中に入ったら煙草吸えないしね。
照明担当の子がプロの照明技師の人からタダで借りた機材とともに、今回の撮影で大変お世話になるプロカメラマンの方と到着。何度も現場に出ている彼女の知り合いであり、時間の節約のために2カメでいくことを検討した際、カメラを貸してくれるどころかオペレートに参加してくれると言ってくれた人です。ありがたい反面プロということで多少の心配もあり、いろいろ口出しされるのでは、などと思っていたのですが、会ってみたらすげえいい人でした。タダ働きだというのに、僕のテンパった注文の数々を涼しい顔で軽くこなしてくれまして、この日の現場で本当に助けられました。
役者がインし、衣装の着付けを手伝ってから地下駐車場へ。セッティング中のカメラを覗いてみると、テストのときはブルーだった色調がアンバーになっていた。撮影用の単管(照明)と合わせたら、ホワイトバランスが変わったらしい。一般の蛍光灯は目に見えないけどグリーンが混じっているため、撮影用の照明とは色温度が違う。今回は劇中に「点滅する蛍光灯」が出ており、それを照明を使って作ってもらったがゆえの誤算。でもまあ、アンバーの色調が駐車場内の空虚さに合っていたのでそのままでいくことに。さらに誤算だったのは、画面を見た今回の指導監督の方から、「これ、明るすぎない?」と言われたこと。テストのときのルックではブルーがいい感じに暗さを演出していたのですが、アンバーにすると確かにちょっと雰囲気が違う。そのため、急遽撮影現場の蛍光灯を、ひとブロックおきに外すことに。えと、これ、大丈夫なの?と心配だったのですが、駐車場の管理の方が非常に協力的(?)で、見てみぬ振りをしてもらえた…らしい。一方現場では、蛍光灯を外したりするのは映画の撮影ではよくあることらしく、カメラマンの方と照明の子がテキパキと外しまくってくれた。スタッフに見得を切っていたとはいえ、それなりに一日で撮りきる公算を持っていたのが大きく崩れることになった瞬間。これ以降、すべてのショットの背景の蛍光灯を抜いて抜いて抜きまくることに。時間がどんどん無くなっていく…。

続く。